ムジカキアラ - MUSICA CHIARA

From MUSICA CHIARA

From MUSICA CHIARA - 2012年2月

平井千絵 むかしのぴあの*フォルテピアノ Vol.6

みなさま こんにちは。
再び読みに来てくださってありがとうございます!
今日はちょっと寄り道で、フォルテピアニスト平井サンのある日を例にとって、フォルテピアノとの生活をご紹介します。

さぁ練習するぞ、と思ったら、調律チェック。
昨日はかんかん照りだったけど、夜中から雨が降ってしまいました。
そんな日の朝、蓋を開けたらすぐに昨日と同じ状態で弾き始められるかというと・・・。
多くの場合、ペケです。
鉄骨のフレームが入っていないフォルテピアノの場合、
環境変化に繊細なので、木のケースや革のハンマーヘッドが湿気を吸って膨らんだ分変化して、音が合わなくなることが多いです。
では調律をして、気持ちよく音を合わせて練習に入りましょ!
全体がどの程度狂っているかまずざっと音を聞いて、チェック。
個人練習のみの日は、ピッチをあまり気にせずに、全体の音合わせだけします。
他の楽器とのリハーサルがある日は、ピッチを気にしながら、調律します。
・・・ピッチとはなんぞや?
・・・調律って何?
はい、ピッチとここで言っているのは、音の高さ。
現代ピアノの真ん中のラの音は、440ヘルツと決められています。
1939年に国際会議(!)が開かれて決められたそうです。
フォルテピアノが使われていた時代、ラのピッチは415から438あたりだったと言われています。
残っている当時の音叉(叩くと一定の音がする金属製の棒)や、
管楽器を調べると、当時使われていたピッチがおおよそ分かるようです。
現在では、世界各国どこに行っても、ラは440から442、と決まっています。
でも、当時は国や街によって、ラの高さがまちまちだったようなのです。
もちろん、現在でも、アメリカのオーケストラとヨーロッパのオケでは、ピッチが違いますが、
その程度の微妙な差ではなく、鍵盤で言うと鍵盤一つ分近いの差が、各国、各街の間であったというのですから、驚きです。
自分のラと相手のラのフラットが同じ高さだった場合、自分の持っている楽譜の音に、すべてフラットを付けて演奏しなければならないわけです。
パリのフルーティストがフルートを持ってマンハイムに出かけたら、マンハイムの音楽家たちのピッチと、自分がパリから持ってきたフルートの
ピッチが合わなくてすぐ演奏できなかった、というような話はたくさん残っています。
自分の楽器のラの高さと、旅先のオケのラの高さが、ソとかシに聞こえるほど違うなんて現象、現在では有り得ません。
ラの音の高さが国際会議で決められる1939年以前は、各国それぞれの基準で、それぞれの音楽をしていたわけですね。
横一列並びじゃないこのカオス感、いいですね~
フォルテピアノの鍵盤の幅や重さ、長さが各地で違っていたというのも、なんだかうなずけます。
違う場所に行ったら違う何かに出会えるということ。最近のヨーロッパですら少なくなってきています。
どこへ行っても、McD___ldやStarb__sがある時代。
その街独自のにおい、みたいなものが、恋しいというか欲しいなぁと思うこの頃でございます。

おっと!
また長くなってしまいました。
フォルテピアノと過ごすある日の風景、を描くはずが、まだ練習にまで
いっとりません。蓋がやっと開いた状態です。
来週は音が出るところにまで行くでしょうか?!

私事ですが・・・
昨日、息子が初めてつかまり立ちをしました。
ちび怪獣くんと日々、格闘中でございます。
それでは!



 

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平井千絵 むかしのぴあの*フォルテピアノ Vol.5

さて今日は、フォルテピアノの辿った道のりについてです。フォルテピアノ、と一口に言っても、実にさまざまな外観を持つことをご存じの方もいらっしゃると思います。色、かたち、大きさ。たった10年違っただけで、同じ国で作られたフォルテピアノであっても驚くほどの違いが見られます。約200年かけて少しずつ現代ピアノへと変身した、その道筋すべてがフォルテピアノの姿なので、フォルテピアノはひとことでは言い表せない多様なスタイルを持つものだ、ということになります。

フォルテピアノ、という呼び方はあくまで総称です。何の総称かというと、初期のものから、現代ピアノに至るまでの打弦構造を持つ多様な鍵盤楽器の総称、です。たとえばこの写真の4台、

http://www.fortepiano.eu/

大きさ(鍵盤数も縦の長さも)、鍵盤の色、等々ずいぶん違います。しっぽの形も違いますし、脚の太さもデザインも。そしてもちろん、木の種類も。左が一番古いいわゆる初期のフォルテピアノでモーツァルトやハイドンの時代の楽器で、一番右の楽器(青年ショパンがパリでデビューするかしないかくらいの年代の楽器です)との間には42年しか時代差がないのですが、外観だけでもこんなに違いがあります。音色は・・・もちろんびっくりするほど違います。タッチも・・・時代が後になるにつれ、だんだん重くなっていきます。鍵盤を打つハンマーが(音量増加を求めて)大きくなっていくからなんですが、上述2台の楽器の間ですでに数倍の違いがあります。

そういうわけなので、フォルテピアノってどういう格好をしているんですか?と訊かれて答えるのは、なかなか難しいのです。
「ええと、18世紀末ウィーンの初期のモデルに関して言えばですねぇ、主に使われていた木材はxxxで、ハンマーヘッドの革の材質はxxxですが、巻かれ方は・・・」
なんていう、長ーーい話になってしまうんです。フォルテピアノの鍵盤の色って、白黒逆転ですよね?って、きらきらした眼差しでみえるお客さまに、
「えー、はい、初期のものはまぁ、はい、そうです」
などとハッキリしないお答えを返して、きらきらお目々をはてな印に変えてしまったこと、多々あります(沈)。

白黒逆転鍵盤は、チェンバロの時代、標準仕様でした。チェンバロの時代というのは、フォルテピアノの時代が始まる前までの18世紀末まで、と“今は”言っておきます。撥弦構造のチェンバロ(弦を爪ではじいて音を出す仕組みです)を改造して、打弦構造(=弦をハンマーなどで打って音を出す仕組み)を組み込んだ、“初期の”(またこの言葉ですねぇ、すみません~)フォルテピアノの鍵盤は、チェンバロ時代の名残を残して、現代ピアノと比べると白黒逆転でございます。なので、わたしがモーツァルトのプログラムで使う楽器は

(↓こちらのページ一番上に載っているものです。正確には兄弟楽器ですが)
http://www.gerardtuinman.nl/Instruments.html

鍵盤の色もこのようになっております。

フォルテピアノが生まれる前は、オルガン、クラヴィコード、そしてチェンバロという鍵盤楽器を使って、人々は音楽を楽しんでいました。そこに、もっと”違う響き”を求めた時代の欲求により、フォルテピアノという新しい楽器が生まれ、チェンバロに代わって人々の気持ちを惹き付けるようになりました。その今までになかった“違う響き”とは、“弱音の魅力”と“音量を自由に変化させることのできる柔軟性”です。ここ、素敵なポイントなので、回を改めてもっと詳しくお話します。

でもね、ん?と思いませんか?弱音の魅力を追求したくて生まれ、またたく間に人気をさらったフォルテピアノだったのに、わずか十年かそこらの後には、音量の増加を求めて巨大化への変化が始まるんです。より大きいハンマーで打って、初期のピアノにはなかった金属のフレームと堅牢なフレームで楽器全体を支えようというアイディアになってきます。

上記紹介したサイトは、ポール・マクナルティ氏、ヘラート・タウンマン両製作家のページです。日本でも、フォルテピアノ製作家の方、あちこちにいらっしゃるようで、是非是非お会いしたいと思っております!チェンバロ製作家さんは、ほんとうに多いんですよ、日本。良い国だ~。オランダ村のことしか知らないので、どなたかいろいろ教えてください。よろしくお願いします。

みなさんの地域では、梅の花、もう開きましたか?では!
 

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平井千絵 むかしのぴあの*フォルテピアノ Vol.4

みなさま、こんにちは!
引き続き、フォルテピアノの特徴、今日は特に現代ピアノとの違いについてお話したいと思います。
前回は、鍵盤の数、そして幅と長さ(奥行き)について主にお話いたしました。
そういえばかつての自分は、”むかしのぴあの”の鍵盤数が、現代ピアノよりも少なかったことを知りませんでした。
現代ピアノだけで演奏していた頃は、どうしてモーツァルトやベートーヴェンは好き好んで、真ん中辺の音域だけ使って作曲したのか、不思議でしょうがなく、不可解でした。
音形だけ見ると明らかに軽さのある表現が求められているのに、軽やかな高音域エリアが使われないこと、それからもっと思い切って低音の
パンチを効かせても良かろうにと思われるところで中音域帯に留まっていることへの疑問は、初めてフォルテピアノを弾いてみて、一気に氷解しました。
モーツァルトもベートーヴェンも、彼らの時代のピアノの全音域をめいっぱい使って作曲していたんです!
62鍵すべてをフル活用していたんです。
その曲を、現代の88鍵のピアノで演奏していたから、鍵盤の両端は使われないでいて、手持無沙汰な感じだったんですね。

フォルテピアノの最高音域は、もうほんとに、”ここまでしか出ません!”な音がするんです。
高い音まで歌おうと思って、必死で声を張り上げていくと、人間、だんだん声が細くなっていきますよね。
あんな感じです。(あ、マイナスイメージでとらえないでくださいね。)
ぼく、機械だからどんなことでもできるもんね、という可愛くない余裕はありません。(笑)
もうここまででぎりっぎりです!声域の限界です!という人間的な(とあえて言ってしまいます)
愛おしさがあります。
弱さとか、不完全さは、性格です。弱点ではなくて、キャラです。
完全無敵な美人じゃなくても、なんだか素敵な顔、に出会って魅かれるような。
そういうキャラ美人(!)な楽器を使った結果生まれたのが、あのモーツァルトの完全なる美なのかと思うと、モーツァルトの芸術が、自分と同じ人間の手によって作られたものとして急に近づいてくる感じがしますし、抽象的な音の列びではなく、セリフやおしゃべり、レチタティーボのように聞こえてきます。

フォルテピアノと現代ピアノの違いは他にも、
1)フォルテピアノ(以下、FPとします)は、弦がすべて並行に張られているけれど、現代ピアノ(以下、Pとします)は交差していること。

2)弦をたたくハンマーの大きさがFPの一番ちいさいもので女性の小指の爪ほどのものに対して、Pは少なくともその8から10倍の大きさであること。

3)楽器をサポートする金属の鋳物が初期のFP*には入っていないので、本体自体が70キロ程度だけれど、Pは300キロ以上あること。

*初期のFP、という呼び方をしたということは、お察しの通り、FPは徐々に巨大化しながらPへと変身していくわけですが、この変身についてはまた
回を改めます。


さて、子供の頃から音大をピアノ科の学生として卒業するまで、わたしの中で大きな疑問かつフラストレーションだったことのひとつに、Pの音の性質があまりにも弦楽器や歌とかけ離れている、ということがありました。
当時最大の悩みは、どうやってひとつの音を消したいように消すか、ということでした。
ピアノ以外の楽器は、伸ばしている間、ひとつの音を、弓や息の圧力をコントロールすることによって、自由に膨らませたりボリュームダウンすることができます。
当然、好きな切り方で音を切ることもできます。
PもFPも一度鳴らした音は、減衰していくのみで共通した特徴なのですが、長い時間掛けてゆーっくりボリュームダウンするのが、Pの性質であるのに対して、FPは減衰スピードが速く、音が消えるまでの時間が短いです。
後期ロマン派以降の息の長ーーいフレーズ感には、Pのたっぷり感が必要ですが、ハイドンやモーツァルトの滑舌の良さとおしゃべり感を出すためには、いつまでも消えずに伸びる音という特長が、あだになってしまうのです。
くっきりキラキラ硬質で、さっと溶けてなくなるようなFPのキャラを持ってすれば、自然体に音楽を語ることができることを体感して、なんて気持ちよいのだろうと感動しました。
なにかトリックを使わなくても、素直に音楽に向かい合い、表現することができる、その正直さというか真っ直ぐさにひかれ、FPと生活を共にすることを決めました。

というわけで、本日はこの辺で。
また来週にご期待ください。
 

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平井千絵 むかしのぴあの*フォルテピアノ

みなさん、こんにちは。

今日は予告どおり、フォルテピアノってなんだろう?です。私が演奏しているフォルテピアノ(以下、Fp)とは、ひとことで言えば、現代のピアノのご先祖様。神童モーツァルトやピアノの詩人ショパンの使っていたピアノで、それらは、現代の真っ黒いグランドピアノとは見かけも音色も全く違うものでした。チェンバロに代わる新手の楽器として瞬く間に人々を魅了したフォルテピアノは、誕生後100年ほどの間に、現代ピアノ(フォルテピアノに対してモダンピアノ、と呼び分けられます)へとじわじわと変貌を遂げましたが、最初期のフォルテピアノは、88鍵のモダンピアノに比べ、62鍵。鍵盤の重さは半分以下、鍵盤の深さは六分の一ほどで、空を駆け回るようなモーツァルトの闊達さにぴったりです。

時代が30年ほど経って、ベートーヴェン晩年のころになると、音域は最大79鍵にまで拡大され、鍵盤を押し下げるときの手ごたえ(タッチ、と呼んだりします)もだいぶ重くなってきます。ところが、どのフォルテピアノ製作家も一斉に同じような規格で楽器を作ったかというとそうではなくて、鍵盤の幅ひとつ取っても、一台一台ばらばら。決まった規格はありませんでした。今では、どこのピアノも、鍵盤の幅は同じです。世界を旅する演奏家にとっては、ありがたい状況ですね。19世紀、ロマン派に生きた旅するピアニストのひとり、メンデルスゾーンやクララ・シューマンなどは、旅先のピアノによって、がらっとタッチや指使いまで変えていたことでしょう。私自身も、一度コンチェルトの演奏会で用意されたフォルテピアノの鍵盤の幅が、極端に狭くて長い(奥行きがある、と表現すればいいでしょうか)ことがあり、最低音部に向かってジャンプするところで、行き過ぎて、鍵盤のないところに着地してしまった経験があります。

・・・今週も長くなってしまいましたので、この続きは来週に。なぜフォルテピアノにそもそも惹かれたのか、というお話もしたいのですが、来週に両方語ることができるでしょうか?! 

ますます寒さ厳しい折、お元気に過ごせますように。また来週、覗きにいらして下さい。
 

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News

西宮 ロータリークラブPresents PACオーケストラとワンコイン・コンサート
出演者によるスペシャル・コンサート ドリーム・コンチェルト

日時:2012年5月12日(土)14:00開演
会場:兵庫県立芸術文化センター
出演: 山下一史(指揮)、兵庫芸術文化センター管弦楽団、
吉田 誠(クラリネット)、田邉織恵(ソプラノ)、
与那城 敬(バリトン)、清永あや(ヴァイオリン)

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ニューアルバム『Mozart Speaks Vol.1~モーツァルト ピアノ作品集』リリース!

モーツァルト ピアノ・ソナタ全集録音プロジェクト第1弾が5月9日に発売になります。
広範な専門知識と確かなテクニックで裏付けられている平井千絵の演奏は、
当時の響きを蘇らせるだけではなく、聴くものを惹きつける瑞々しい感性に溢れています。
現在進行形で変化を続ける平井千絵の「今」をお聴きください。

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ニュージーランドレポートVol.2

PV撮影は無事終わりました♪
お天気にも恵まれ、ニュージーランドの大自然に包まれて、素晴らしい映像になると思います!

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『クロワッサン』824号(2月25日発売)

「わたしきのうきょうあした」 に熊本マリが登場です!

新譜「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第4集~際立つ個性の迸り」が≪レコード芸術≫特選盤に選ばれました!

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